PRP問答集
総論
総論① 再生医療とは
人が生まれながらに持っている「自然治癒力」を活かした治療法です。
再生医療は、日本国内において、再生医療新法により、①安全性が担保された治療についてのみ、②許可された施設のみで、③許可された医師に限り、治療を行うことが可能となりました。
再生医療には様々な種類がありますが、大きく3つに分類され、特にリスクの高い再生医療1種に位置づけられているのは、iPS細胞などがあり、2種は、体性幹細胞、3種は体細胞を加工するものと位置づけられました。
当院が行う再生医療は、PRP療法といわれ、血液加工物の関節内投与が2種、血液加工物の関節外投与が3種と位置づけられております。
総論② おゆみの中央病院の再生医療
当院は、再生医療法(再生医療等の安全性の確保等に関する法律第40条第1項)の規定に則り、再生医療等提供計画(治療)に関する届出を関東信越厚生局へ提出し、2019年8月2日に受理されました。
当院で行う再生医療は、PRP療法といわれ、血液の加工や、分離・抽出を行い、治療効果の高い成分だけを体内に戻す、再生医療の中でもリスクの低い治療法です。いずれの治療も、通院だけで済むことから、日常生活における制限・負担が小さく済むのも特色です。
- 血液加工物の関節内投与(2種)
多血小板血漿抽出液による関節症治療(計画番号PB3190026)
【使用キット】APSキット - 血液加工物の関節外投与(3種)
多血小板血漿を用いた靭帯・腱及び腱付着部の機能障害・疾患の治療(計画番号PC3190059)
【使用キット】GPSⅢキット
総論③ PRP(多血小板血漿)療法とは
PRP療法は、患者様自身の血液から、治療に必要な成分を濃縮・抽出し、患部に注射する再生医療です。国内では、形成外科や歯科口腔外科領域での使用が中心でしたが、今では、整形外科領域における治療にも、広く一般的に使用されています。
総論④ アスリートとPRP
PRPは、ドーピングの対象外でもあり、非侵襲・早期現場復帰が可能な治療として注目を集めており、欧米では、一般的な治療として広まっています。
総論⑤ PRP療法の仕組みが知りたい ※APSは別
血液に含まれる細胞成分の一種である血小板には、主に、「血液を固める」働きと、「組織を修復する成長因子を放出する」働きがあります。PRPは、血小板や白血球等が多く含まれた血液の一部で、前述の働きが期待されます。
この治療は、ご自分の血液を使用して、専用の医療機器(キット)を用いて、遠心分離することで、安定・一貫したPRP(多血小板血漿)を抽出することができ、抽出されたPRPを患部に注射することで、組織の再修復を促す働きが期待されています。
総論⑥ APS療法とは
次世代PRPとよばれているもので、PRPを更に処理し、抗炎症性サイトカインの多いPRP(APS)を抽出します。
変形性膝関節症は、軟骨がすり減り、関節内の炎症バランスが崩れ、痛みを伴います。この炎症バランスが崩れた状態は、炎症性サイトカインの比率が多い状態であることが多く、痛みを生じます。APSの患部注射は、関節内の炎症バランスを整える作用による痛みの軽減が期待されており、手術に踏み切る前の治療として注目を集めています。
総論⑦ 当院で使用するキットの特徴
基本的には自己血小板を使用し、組織の改善を図る治療という意味ではコンセプトは同じです。当院では、数多くあるPRPの精製方法の中でも、高齢者から、成長過程にある学生アスリートまで、幅広い年齢層をカバーし、整形外科に特化したジンマーバイオメット社(以下、ジンマー社)の精製キットを導入しております。
ジンマー社のキットは、臨床使用可能なクラスⅢ医療機器として認証されており、特に安全性の高いキットです。また、精製の過程で、人が操作する工程が少ないことから、安定・一貫した精製・抽出が可能です。また、キットの性質上、細菌混入の可能性は極めて低いうえ、人が操作する工程では、滅菌手袋の着用と、クリーンベンチ内における作業を指定しており、細心の注意を払って、PRPを精製する体制を整えております。
総論⑧ 手術との比較
入院が不要であり、身体的負担も軽い点はメリットといえます。半面、PRP療法は、始まったばかりの治療であり、効果に個人差が大きいことが報告されています。また、保険適用外となり、費用負担が大きいことがデメリットといえます。
料金
料金① 費用について
PRP療法は保険適用外(自由診療)です。従いまして、PRP療法に関する費用は全額自己負担となります。実施部位、使用するキットにより料金が異なります。(下記参照)
使用するキットについては、医師にお尋ねください。
- 血液加工物の関節外投与(3種)
【使用キット】GPSⅢキット 120,000円(税別)(132,000円(税込)) - 血液加工物の関節内投与(2種)
【使用キット】APSキット 300,000円(税別)(330,000円(税込))
PRP療法の実施が可能であるか判断するために血液感染症検査を行います。検査費用(17,600円)は、上記の金額に含まれています。
料金② 費用の設定について
自由診療のため、医療機関ごとに設定が異なります。
PRP精製キットは複数あり、性能・料金が様々です。医療機関が採用する精製キットは、効果・安全性に対する医療機関の考え方によって異なります。
また、当院では、PRP療法に関する血液感染症検査費用の他、PRP療法実施後に生ずる実施部位の疼痛に対して、鎮痛剤を処方いたしますが、これらの費用も「料金①」に含まれております。
料金③ リハビリテーションについて
PRP実施部位のリハビリテーションは、PRPに関連する血液感染症検査日以降、6ヵ月間の定期診察終了まで、保険適用外(自費診療)となります。そのため、当院ではリハビリテーションを希望される患者様に向けて、オプション制(保険適用外(自費診療))にて提供しております。追加でご希望の場合は主治医にご相談ください。
料金④ キャンセル費用について
検査費用等、既に発生している費用は、検査の結果、施術ができない場合であっても返金いたしません。
- 1回目の受診時、疾病の状況を把握する為、検査を実施します。PRP療法を希望されて来院された方も、PRP療法以外の治療との比較を行う為、保険を適用して疾病の診断を行います。この費用は、PRP療法実施の有無に関わらず発生します。
- 2回目の受診時、血液感染症検査等により17,600円(税込)が発生します。PRP療法を目的とした検査で、保険が適用されません。PRP療法実施費用に含まれております。
- PRP療法実施日、採血の準備にとりかかる過程でキットを開封いたします。そのため、実施日の診察後にキャンセルされた場合は、医療材料費用が発生いたします。
実施日の診察時にキャンセルされる場合
診察前にお支払いいただいた費用をご返金します。
※血液感染症検査等費用は返金いたしません。
実施日の診察以降にキャンセルされる場合
ご返金額は以下の通りです。
[GPSⅢ 49,500円 / APS 104,500円]
PRP療法実施後は、いかなる場合も(全く効果が感じられない場合も)、返金には応じられませんので、ご了承ください。
料金⑤ 医療費控除について
PRP療法に関する医療費は、確定申告の際、医療費控除に該当します。
納税者が、自己又は自己と生計を一にする配偶者や親族のために支払った医療費であること等の条件がございます。詳しくは、税務署にてお問合せください。
PRP療法全体の流れ
PRP療法を実施する前に2回の診察を行い、3回目のご来院時にPRP療法を実施します。
【1回目のご来院(保険診療)】
- 診察してPRP療法の適応に可能性があるかどうかを検討します。(その後、病院内でも検討会議を行います。)
【2回目のご来院(自費診療)】
- 病院内の検討会議の結果をお伝えします。
- 同意書をお渡しします。(PRP療法の長所・短所を十分ご理解いただいたうえで実施を希望されたときに、同意書にご署名いただきます。)
- PRP療法実施日を決定します。
- 実施前の血液感染症検査、身体機能測定を行います。
【3回目のご来院(自費診療)】
- PRP療法を実施します。
【4回目のご来院(自費診療)】※PRP療法実施から1週間後
- 実施した部位の状態を診察します。
【5回目以降のご来院(自費診療)】※PRP療法実施から半年間、1ヶ月ごと
- 実施後の経過を診察します。
安全・リスク
安全・リスク① 精製キットの安全性について
PRP療法は、自分自身の血液を用い、しかも培養操作が不要なため、安全性は高い分類の再生医療と言えます。また当院で使用する精製キットは、数多くあるPRP精製キットの中でも、特に安全性が高いジンマーバイオメット社(以下、ジンマー社)の精製キットを導入しております。
ジンマー社のキットは、臨床使用可能なクラスⅢ医療機器として認証されており、キットの性質上、細菌混入の可能性は極めて低いうえ、人が操作する工程では、滅菌手袋の着用と、クリーンベンチ内における作業を指定しており、細菌感染に細心の注意を払って、PRPを精製する体制を整えており、当院のPRPは、極めて高い安全性を誇ります。
安全・リスク② 休薬に伴うリスクについて
血液中に残っている薬の成分によって、PRPの精製が困難であったり、効果が低くなることが予測される種類の薬があります。PRPの機能を最大限に発揮するうえで、内服薬を一定期間、休薬することを 推奨させていただくケースがございます。
休薬のリスクで特に注意を要するのは、抗血小板薬や抗凝固薬などの休薬に伴い、血液凝固が原因となる疾患(脳梗塞や心筋梗塞など)のリスクが高まる可能性があげられます。原疾患の治療に当たられている医師に相談させていただくことになりますが、仮に休薬が可能と判断があったとしても、リスクが無くなるわけではありません。
安全・リスク③ 休薬を推奨される薬の種類
- NsAIDs(非ステロイド抗炎症薬)(実施前 14日、実施後 3日)
代替薬(セレコックス、カロナール) - 抗血小板薬(実施前 1~14日、実施後 3日)
代替薬(なし) - 抗凝固薬(実施前 1~5日、実施後 3日)
代替薬(なし) - ステロイド剤(実施不可
上記の他にも、注意しなければならない内服薬があるため、必ずお薬手帳か、内服薬の内容が分かる書類をお持ちください。
処方薬の他、市販薬やサプリメントにも、休薬を推奨させていただく可能性があります。市販薬やサプリメントの内容が分かる書類か、実物をご持参ください。
安全・リスク④ 副反応について
PRP(多血小板血漿)療法は自分の血液を用いた治療方法で、他人や動物由来のものを使用しないためアレルギー反応によるリスクは極めて低いといえます。また、当院で使用する精製キットは、医療機器として認証されており、極めて高い安全性を誇ります。
採血前まで自分の体に流れていた、本来は傷を治す働きのある血小板を精製して少量注射する治療法であり、これまで、重篤な副作用は報告されていません。
ただし、一般的な注射治療(ヒアルロン酸注射等)と同様に、痛み、赤み、腫れ、灼熱感、皮下出血などの副反応は起こり得ます。特に、筋腱靭帯への投与では、症状が発生し易いと報告をうけております。一般的には実施後1週間程度症状が続きます。症状の強い場合はご相談ください。
安全・リスク⑤ 日常生活の制限について
実施部位によって異なりますが、実施後2週間、激しい運動やマッサージなど実施部位へ刺激が加わるようなことはお控えください。また、PRP療法実施当日の運転については、痛みや違和感から、支障を来す恐れがありますので、なるべくお控えいただくようお願いしております。併せて、実施当日の入浴は、痛み等の症状増加を防ぐため、お控えいただいております。
効果
効果① PRP療法の効果について
即効性はありませんが、徐々に組織の修復が起こります。効果やその持続期間は、元々の症状によっても異なり、個人差があります。
効果② 効果の期間
- APSキット(2種)
効果の最大化は、3~6ヵ月です。効果の継続期間は、2年程度という研究結果もあります。 - GPSⅢキット(3種)
効果の最大化は、2~3ヵ月です。組織治癒が目的ですので、治癒後は、効果の継続が期待されます。
(出展:メーカー資料より)
効果③ 投与の回数、繰り返し投与について
原則、1回投与です。
繰り返し投与の効果は不明ですが、投与ができないものではありません。
適応
適応① PRP療法の適応に対する当院の指針
PRP療法には「長所と短所」があります。新しい治療法であり、今後、治療実績や研究が進むにしたがい新たな長所や短所が明らかになる可能性が考えられます。そのため当院では、PRP療法の前に従来の治療法を十分に試みることが大切だと考えています。従って、従来の治療法では症状が改善しない患者様や、再悪化を繰り返す患者様にとって、PRP療法は選択肢の一つになりうるというのが当院の考え方です。
1.不必要な治療が行われることを未然に防ぎます。 PRP療法を実施しなくとも、自然に治癒・回復していた可能性のある患部に対し、不必要なPRP療法が行われることを未然に防ぐ観点から、「従来の治療を受けたにもかかわらず、3ヵ月以上の症状持続、または3回以上の症状再燃があった疾患」を対象とすることを推奨しています。
2.適応を慎重に判断します。
病状を正確に診断したうえで、PRP療法によって治療効果が得られるか、複数の医師が参加する院内検討会議を行います。患者様によっては他の医療機関からの診療情報も参考に慎重に判断します。
3.PRP療法に関する最新情報の収集と情報発信を積極的に行います。
治療実績の報告や関連する最新の論文等によって、PRP療法に関する情報の更新に努め、治療効果と安全性の向上を目指します。また、重要な情報については、積極的に情報発信に努めます。
適応② 適応と思われる状態【2種】
- 変形性膝関節症と診断を受けている
- 膝が悪く生活に支障をきたしている
- 消炎鎮痛剤、湿布、ヒアルロン酸注射、リハビリテーションなどの治療を行っている
- スポーツに早期復帰したい
- 再生医療を試してみたい
- 手術に踏み切れない
適応③ 適応と思われる状態【3種】※GPSⅢ
- 上腕骨外側上顆炎(テニス肘)
- 上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)
- 膝蓋腱炎(ジャンパー膝)
- アキレス腱周囲炎・足底腱膜炎など
- 筋腱が悪く生活に支障をきたしている
- 消炎鎮痛剤、湿布、ヒアルロン酸注射、リハビリテーションなどの治療を行っている
- スポーツに早期復帰したい
- 再生医療を試してみたい
- 手術に踏み切れない
適応④ PRP療法を受けられない場合
- がんと診断を受けたことがある
- 抗がん剤、生物学的製剤または免疫抑制剤を使用している
- 患部に細菌感染を伴っている
- 心疾患、肺疾患、肝疾患、腎疾患、出血傾向、血液疾患、コントロール不良な糖尿病および高血圧症等を有する
- 薬剤過敏症の既往歴がある
- 血液感染症を患っている
- 血液検査の結果、血小板数の異常がある
- ステロイド剤を服用している
- 1か月以内にPRP療法を受けた
その他
その他① 採血の取り直しについて
体調の良くない場合や血液の状態、又は、患者様の血管の状態によっては、1度の採血では十分な量の採血ができない場合もあります。その際には、再度採血をする場合がありますので、あらかじめご了承ください。
その他② 機材の破損について
PRPを精製する機器は、メンテナンスをしていても突然故障することもあります。その場合は、日程や時間を変更させていただきますので、あらかじめご了承ください。