消化器内科医長 吉田医師インタビュー
私は富山県の出身で、高校までを地元で過ごしました。その後、東京工業大学に進学し有機化学(天然物・生物有機化学)を専攻していました。大学4年生の時、研究室での抄読会で、偶然出会った抗がん剤5FUの論文が私の人生の転機となりました。生まれて初めて医学に興味を持ち、「この抗がん剤を使っている人になりたい」と思ったことがきっかけで、高校生の頃には全く考えていなかった医師への道を志すようになりました。大学卒業後、医学部を受験し、旭川医科大学に入学しました。旭川で初期研修を終えた後は、消化器内科を専門として行くことを決めました。
消化器内科は、実は非常に身近な診療科です。腹痛や下痢などを経験したことがない人はこの世の中にそうはいないですし、食べることと排泄は生きる上で最も根本的なものの一つでもあります。また、日本人の死因として一番多いのは癌ですが、診療科の中で一番多く扱うのは消化器です。多くの人の悩みに手を差し伸べることができる消化器内科を専門としつつ、医師・人として全人的な医療を提供できる医療者になろうと決めたのでした。
消化器内科医としては、金沢大学およびその関連病院で研究と臨床経験を積みました。金沢大学での肝臓に関する研究や北陸各地の病院での多様な臨床経験を通じて、技術と知識を深めましたが、「地域に根ざした医療を提供したい」という強い思いから、より長期的に患者さんと向き合える環境を求めて、おゆみの中央病院に来ることを決めました。
おゆみの中央病院では、病気で苦しんでいる人や悩んでいる人を、基本的に紹介状なしで診察が可能であり、また長期的に手を差し伸べられる環境があります。病気の中には、一回の受診で終了となることもありますが、多くの場合、継続的なフォローが必要で治療後の経過観察や生活習慣の指導が欠かせません。当院は、地域に根ざし、患者さん一人ひとりに対して継続的かつ包括的なケアを提供することに力を入れており、私自身も当院で働くことに大きなやりがいを感じています。
当院はリハビリが非常に充実しており、また地域連携や訪問診療などの後方支援がしっかりしている点が特徴です。大きな病院では、患者さんが退院するとその後のフォローが難しい場合がありますが、当院では退院後も継続的に患者さんをサポートできる仕組みが整っています。入院中は、治療と並行して積極的なリハビリ介入を行い、退院後も関連施設や提携施設によっては、退院した患者さんが施設に行った後も報告やカルテに記録が残るなど、継続的なケアが徹底されています。私自らも施設訪問し経過をみたり、カルテベースで患者さんの経過をみたりフォローしている患者さんが多数いらっしゃいます。こうした体制は、患者さんにとって非常に安心できるものだと感じています。
当院の消化器内科には、さまざまな症状の患者さんが訪れます。便秘や下痢など、みなさんが一度は経験したことがある疾患から、腹痛や食欲不振の患者、ポリープ切除を希望する患者、そして進行癌まで幅広い患者が訪れます。時には全身の痛みで来院される方もいらっしゃいます。当院では、丁寧な診察、血液検査、内視鏡検査、超音波検査、CT検査、MRI検査などを駆使して、幅広い視点で多様な症状に対応し、当院で治療介入ができない症例には高次医療機関とも連携をとり、患者さん一人ひとりに適切な診療を提供することを目指しています。
当院の消化器内科は2021年に設立されました。現時点で常勤の医師は私一人のため、非常に高度な手技や治療は行っていませんが、私の体力が許す限り、症状に悩む患者さんを基本的にお断りすることなく、受け入れています。
当院は整形外科手術など専門分野に特化した病院です。治療過程によっては鎮痛薬や抗生物質の使用、手術侵襲などにより、消化器系をはじめ体に大きな負担がかかることがあります。痛み止めの使用による消化管出血などは代表的なものです。入院中の患者さんが安心して治療が受けられるように、術後のケアや副作用のサポートにも全力で関わっております。
その一方で、胃カメラ・大腸カメラによる内視鏡検査・治療も毎週実施しておりますし、内科・消化器内科としても入院を受け入れております。
そのような環境ですので、消化器系専門医としての役割はもちろんですが、それ以前に内科医・医師として、専門分野にとらわれず、人として患者さんと向き合うことを大切にしています。
私たちの今後の目標は、患者さんの当院へのアクセスをより簡単にすることです。現状、胃カメラや大腸カメラの検査を受ける患者さんの中には、他の病院に紹介せざるを得ないケースがあります。たとえば現状当院では、検査の際に鎮静剤(眠り薬)を使用していません。今後、鎮痛剤を導入することで、鎮静を希望する患者さんにも対応できるようにしたいと思います。鎮静を使用することで、胃カメラや大腸カメラの検査がより快適に受けられるようになります。鎮静がないために他の病院を選ぶ患者さんも少なからずいらっしゃるため、こういった方々にも手を差し伸べられる病院にしていきたいと考えています。また、大腸カメラ検査においても、患者さんの痛みを軽減するための工夫を取り入れたいと考えています。大腸カメラの苦痛の一つが、検査中に大腸に入れた空気によるお腹の張りです。腸管を観察するためにある程度空気を入れる必要がありますが、奧に入れた空気が残ってしまうことがあり、検査後にどうしてもお腹が張り、苦痛を伴うことがあります。送気装置に二酸化炭素(CO2)を使用することで、検査後の腹部の張りを軽減することができます。二酸化炭素は体内に吸収されやすいため、空気を使うよりも患者さんの負担が少なくなります。このような装置も導入できるように病院に申請しているところです。
このように、少しでも患者さんの負担を減らす技術を少しずつ取り入れることで、現在は他の病院に紹介せざるを得ない患者さんにも、手を差し伸べられるようになりたいと考えています。いきなり大きな変革を行うのではなく、装置や設備、そして医療スタッフの対応力を少しずつ向上させていき、より多くの患者さんに対応できる体制を整えていきます。現時点でも、患者さんの受け入れに対して拒むことはありませんが、さらに受け入れ態勢を強化し、真の意味で「来るもの拒まず」の姿勢を実現したいと思っています。
当院がクリニックと大きく異なる点は、入院できる設備があることです。消化器系の病気では、絶食により腸管安静を保つだけでも治療になることがあります。入院をして点滴を行いながら経過観察ができる環境は、消化器系の治療において重要です。
私は北陸から来ましたので、地域での個人的なコネクションはまだ少ないですが、地域の医療機関との連携をより強化するため、積極的に会合に参加しています。地域の先生方と顔を合わせ、個人的なつながりを築くことで、患者さんの紹介や情報共有がスムーズに行えるよう努めています。今までの当院が築き上げてきた周辺の大きな病院との連携体制や当院の地域連携部門がしっかりしているため、現段階においても紹介に困ることはありません。
地域のクリニックの先生方には、消化器に関する症状や少しでも疑わしい症例があれば、気兼ねなくご紹介いただきたいと思っています。たとえば、超音波検査で明らかな異常を描出することができなかったとしても、少しでも精密検査が必要と考えられた際にはご紹介いただけますと幸いです。また、当院は小生の赴任にて肝疾患指定医療機関となりました。未治療のC型肝炎患者などもご紹介いただきたいと考えています。当院で解決できない場合は、より高次の専門機関に紹介する体制も整えています。地域の皆様にとって、安心して相談できる消化器内科医・医師として、そしておゆみの中央病院の一員として、最善の医療を提供していきたいと考えています。
略歴
学歴
- 旭川医科大学 医学部医学科 卒業
職歴
- JA北海道厚生連 旭川厚生病院 初期臨床研修医
- 金沢大学附属病院 消化器内科 医員
- 社会福祉法人恩腸財団 済生会支部 福井県済生会病院 消化器内科 副医長
- 独立行政法人国立病院機構 金沢医療センター 消化器内科 医員
- 白山石川医療企業団 公立つるぎ病院 内科 医員
- 金沢市立病院 消化器内科 医長
- 公立羽咋病院 内科 医長
- 医療法人社団中央会金沢有松病院 内科 医員
資格
- 認定内科医
- 消化器病専門医
- 消化器内視鏡専門医
- 肝臓専門医