生化学検査

TP(別名:総蛋白)

検査により何がわかるか

  • 健康や栄養状態、肝機能障害を推測できる。

どのような検査か

血清蛋白の多くは肝臓で作られますが(血清蛋白の大部分を占めるアルブミンが肝臓で合成されるため)、その際にはアミノ酸をはじめとするいくつかの材料が必要になります。
よって栄養状態の悪いときには材料が不足しているため蛋白を合成することができなくなり、血清蛋白は低下します。
また、種々の肝機能障害でも蛋白の合成能力が低下するため、血清蛋白も低下します。
血清蛋白は栄養状態や健康状態をみるのに大変重要な検査なのです。

どのようなときに検査するか

  • 日常初期診療における基本的検査として
  • 高蛋白血症あるいは低蛋白血症をきたす疾患の存在を疑うとき

疑われる病気

高値の場合
多クローン性
自己免疫疾患、慢性炎症性疾患、肝硬変、悪性腫瘍、感染症など
単クローン性
多発性骨髄腫、マクログロブリン血症など
低値の場合
栄養不足性
栄養摂取不足、腸吸収不良症候群など
肝障害性
急性肝炎、肝硬変など
蛋白漏出性
ネフローゼ症候群、蛋白漏出性胃腸症など
異化亢進性
急性感染症、慢性消耗性疾患など
体内分布の異常
全身性浮腫、日焼けなど

検査を受けるときの注意

食事による影響はありませんが、服用している薬剤により影響を受けることがあります。使用中の薬があれば事前に医師に報告し、指示に従ってください。

Alb(別名:アルブミン)

検査により何がわかるか

  • 健康、栄養状態を推測できる。

どのような検査か

アルブミンは血清蛋白中の約70%を占める蛋白質で、体内で浸透圧の維持や各種の物質と結合し、それらの運搬に関与しています。
アルブミンは肝臓で作られますが、その際にはアミノ酸をはじめとするいくつかの材料が必要になります。
よって栄養状態の悪いときには材料が不足しているため蛋白を合成することができなくなり、アルブミンは低下します。
また、種々の肝機能障害でも蛋白の合成能力が低下するため、アルブミンも低下します。

どのようなときに検査するか

  • 日常初期診療における基本的検査として

疑われる病気

高値の場合

血液濃縮(脱水症)

低値の場合
栄養不足性
栄養摂取不足、腸吸収不良症候群など
肝障害性
急性肝炎、肝硬変など
蛋白漏出性
ネフローゼ症候群、蛋白漏出性胃腸症など
異化亢進性
急性感染症、慢性消耗性疾患など
体内分布の異常
全身性浮腫、日焼けなど

AST(GOT)

肝臓、心筋(心臓の筋肉)、骨格筋などの障害を推測できる。

どのような検査か

GOTは肝臓、心筋、骨格筋に多く含まれている酵素なので、それらの臓器や組織が障害(破壊)された場合、血液中のGOTの値が異常に上昇してきます。
臓器や組織の種類、障害の程度によってGOTの上昇度に差があり、障害の程度が強いほど数値が高くなります。
また、GOTとGPTの比をとることにより、各種肝疾患のおおよその鑑別ができます。

どのようなときに検査するか

  • 肝疾患、心疾患(特に心筋梗塞)、骨格筋疾患などが疑われるとき
  • 肝機能評価として
  • GOT/GPT比による病態評価として

疑われる病気

高値の場合
肝疾患
急性肝炎、慢性肝炎、アルコール性肝炎、肝硬変、肝がん、脂肪肝など
心疾患
急性心筋梗塞など
筋疾患
進行性筋ジストロフィ症、多発性筋炎、筋無力症など
その他
激しい運動、溶血など

検査を受けるときの注意

運動により上昇するため、検査前の激しい運動は避けてください。少し早めに病院に行き、気持ちを落ち着かせから検査を受けるようにしましょう。また、飲酒によっても上昇しますので、前日の飲酒は控えましょう。

ALP(別名:アルカリホスファターゼ)

検査により何がわかるか

  • 肝胆道系の異常を推測できる。
  • アイソザイム分析により傷害された臓器を推定できる。

どのような検査か

ALPはエネルギー代謝に関わる酵素のひとつで、ほとんど全ての臓器や組織に含まれています。 特に胆道系の細胞に多く含まれているため、この細胞が障害を受けると細胞外に出てくるため血液中のALPは高値になります。
よって肝臓や胆道系の障害を調べる検査として有用です。
また、骨の成長に関わる骨芽細胞にも多く含まれているため、骨の病気の検査にも使われます。

どのようなときに検査する

  • 肝胆道系疾患が疑われるとき
  • 悪性腫瘍が疑われるとき
  • 骨疾患が疑われるとき

疑われる病気

高値の場合
肝疾患
急性肝炎、慢性肝炎、アルコール性肝炎、肝硬変、肝がん、原発性胆汁性肝硬変など
胆道疾患
胆管がん、総胆管結石症、硬化性胆管炎など
骨疾患
骨軟化症、骨肉腫、転移性骨腫瘍など
その他
小児期、妊娠末期、甲状腺機能亢進症、尿毒症など

検査を受けるときの注意

脂肪分の多い食物を検査の数時間前に食べると、多少高い値が出ることがありますので注意してください。新生児では成人の数倍、10歳代半ばでも成人の2倍近くの高い数値を示しますが、これは骨の発育が原因ですので問題ありません。また、妊娠中でも高い値を示します。

LDH(別名:乳酸脱水素酵素)

検査により何がわかるか

  • 肝臓、心筋(心臓の筋肉)、骨格筋などの障害を推測できる。
  • 血清LDH活性とアイソザイム分析結果から障害された臓器と障害の程度を推測できる。

どのような検査か

LDHとは細胞内で糖がエネルギーに変わるときに働く酵素で肝細胞、心筋、骨格筋、血球など全身のあらゆる細胞に含まれています。
よって、それらの細胞が障害(破壊)を受けると細胞外に出てくるため血液中のLDHは高値になります。
LDHアイソザイム分析検査を同時に行うことで、障害臓器や障害程度をより詳しく診断できるようになります。

どのようなときに検査するか

  • 肝障害、心疾患、溶血性疾患などが疑われるとき

疑われる病気

高値の場合
肝疾患
急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝臓がんなど
心疾患
急性心筋梗塞、うっ血性心不全など
筋疾患
多発性筋炎、筋ジストロフィなど
その他
悪性貧血、白血病、溶血性貧血など

検査を受けるときの注意

食事による変動はありませんが、運動によって上昇します。ジョギングなどの日常の軽い運動でも高値になり、ときにはそれが1週間近く続くこともあります。検査数日前はなるべく運動を控え、検査当日は少し早めに病院に行き、気持ちを落ち着かせから検査を受けるようにしましょう。また、妊娠中でも高い値を示します。

ALT(GPT)

検査により何がわかるか

肝組織の障害を推測できる。

どのような検査か

GPTは肝細胞に多く含まれている酵素なので、肝細胞が障害(破壊)された場合、血液中のGPTの値が異常に上昇してきます。
GPTもGOTと同様、肝細胞のほかに心筋や骨格筋にも含まれているため、これらの病気の指標にもなりますが、GOTに比べると含まれている量が少なく、上昇の程度は軽くなります。
また、GOTとGPTの比をとることにより、各種肝疾患のおおよその鑑別ができます。

どのようなときに検査するか

  • 肝疾患が疑われるとき
  • GOT/GPT比による病態評価として

疑われる病気

高値の場合
肝疾患
急性肝炎、慢性肝炎、アルコール性肝炎、肝硬変、肝がん、脂肪肝など
心疾患
急性心筋梗塞など
筋疾患
進行性筋ジストロフィ症など
その他
胆汁うっ滞、伝染性単核症など

検査を受けるときの注意

運動により上昇するため、検査前の激しい運動は避けてください。少し早めに病院に行き、気持ちを落ち着かせから検査を受けるようにしましょう。また、飲酒によっても上昇しますので、前日の飲酒は控えましょう。

γ-GTP(別名:グルタミルトランスペプチダーゼ)

検査により何がわかるか

肝胆道系の異常やアルコール性肝障害を推測できる。

どのような検査か

γ-GTPは肝臓の障害を調べる重要な検査です。
特に有名なのが、アルコールが原因で障害が起こると、肝細胞に存在するγ-GTPが血液中に出てきて特異的に上昇し、基準値の数倍から数十倍に上がります。
禁酒により速やかに値は低下し、約2週間の禁酒で数値は半分くらいになりますが、アルコール性肝炎やアルコール性脂肪肝になっていると2~3ヶ月は禁酒しないと正常値になりません。
ちなみに、女性ホルモンにはγ-GTPの働きを抑えたり、肝臓でγ-GTPが作られるのを抑える作用があるため、男性より女性のほうが低い数値になっています。

どのようなときに検査するか

  • アルコール性肝障害が疑われるとき
  • 胆汁うっ滞の指標として

疑われる病気

高値の場合
肝疾患
アルコール性肝障害、アルコール性脂肪肝、常習飲酒、慢性肝炎、肝硬変、肝がんなど
胆道疾患
胆道炎、胆道閉鎖、胆道がんなど
その他
胃がん、肺がんなど

検査を受けるときの注意

食事や運動による影響はありませんが、アルコールに敏感に反応しますので、検査前の飲酒は控えましょう。また、個人差が大きく、年齢や性別でも差がある検査です。
現在肝障害がなくても、アルコールを摂取するとγ-GTPが上昇する人は、将来アルコール性肝障害を起こす危険性が高いといわれています。

CHE(別名:コリンエステラーゼ)

検査により何がわかるか

肝実質障害の有無を推測できる。

どのような検査か

コリンエステラーゼは肝細胞で合成されて血液中に分泌される酵素です。
よって肝細胞が障害されると産生が低下し、血液中のコリンエステラーゼは低値になります。
また、コリンエステラーゼは脂質代謝と関連しているため、栄養の取り過ぎや肥満などで高値になります。
さらに、有機リン剤で活性が低下した場合、重症度の指標にもなります。

どのようなときに検査するか

  • 肝疾患が疑われるとき
  • 有機リン剤中毒が疑われるとき

疑われる病気

高値の場合

ネフローゼ症候群、脂肪肝、糖尿病、甲状腺機能亢進症など

低値の場合
肝疾患
急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝がんなど
その他
胆道閉塞症、膵炎、薬物中毒症など

CPK(CK)別名:クレアチンキナーゼ

検査により何がわかるか

  • 骨格筋、心筋、脳などの損傷の程度を推測できる。
  • アイソザイム分析により傷害された臓器を推定できる。

どのような検査か

クレアチンキナーゼは筋肉に多量に存在する酵素で、筋肉細胞のエネルギー代謝に重要な役割を果たしています。
そのため、筋肉に障害があると、血液中のクレアチンキナーゼは高値になります。
特に、急性心筋梗塞や進行性筋ジストロフィでは著しく高い値になります。
また、CPKアイソザイム分析検査を同時に行うことで、障害臓器や障害程度をより詳しく診断できるようになります。

どのようなときに検査するか

  • 神経・筋疾患が疑われる場合
  • 脳の損傷が疑われる場合

疑われる病気

高値の場合
肝疾患
進行性筋ジストロフィ、多発性筋炎、皮膚筋炎など
心疾患
急性心筋梗塞、心筋炎など
脳疾患
脳血栓、脳梗塞、脳損傷など
その他
甲状腺機能低下症、悪性腫瘍、薬物中毒など

検査を受けるときの注意

運動によって数値が上昇しやすい項目です。ジョギングなどの日常の軽い運動でも高値になり、高い状態が数日間続きます。検査数日前はなるべく運動を控え、検査当日は少し早めに病院に行き、気持ちを落ち着かせから検査を受けるようにしましょう。

CK-MB

検査により何がわかるか

心筋梗塞の迅速診断(特に心電図だけでは判断しかねる場合に有用)や,梗塞範囲・重症度の推定などに用いられる。

どのような検査か

クレアチンキナーゼは筋肉に多量に存在する酵素で、筋肉細胞のエネルギー代謝に重要な役割を果たしています。
そのため、筋肉に障害があると、血液中のクレアチンキナーゼは高値になります。
特に、急性心筋梗塞や進行性筋ジストロフィでは著しく高い値になります。
また、CPKアイソザイム分析検査を同時に行うことで、障害臓器や障害程度をより詳しく診断できるようになります。

どのようなときに検査するか

  • 心筋梗塞が疑われる時
  • 脳の損傷が疑われる場合

疑われる病気

高値の場合

急性心筋梗塞、横紋筋融解症,多発性筋炎,筋ジストロフィなどの骨格筋疾患、甲状腺機能低下症、てんかん,Reye症候群などの痙攣性疾患

AMY(別名:アミラーゼ)

検査により何がわかるか

  • 膵臓、唾液腺、卵巣などの損傷の程度を推測できる。
  • アイソザイム分析により傷害された臓器を推定できる。

どのような検査か

アミラーゼは膵臓、唾液腺を始め、卵巣、小腸、肝臓、肺などに存在する消化酵素である。その中でも特に膵臓の細胞に多量に存在するため、膵臓が障害を受けると血液中のアミラーゼは高値になります。
アミラーゼは血液中から尿中へ排泄されるため、血液アミラーゼと一緒に尿アミラーゼを測定することも重要です。
また、AMYアイソザイム分析検査を同時に行うことで、P型(膵臓由来)かS型(唾液腺由来)を区別することができます。

どのようなときに検査するか

  • 膵疾患、唾液腺疾患、卵巣疾患が疑われるとき

疑われる病気

高値の場合
膵疾患
急性膵炎、慢性膵炎、膵のう胞など
その他
流行性耳下腺炎、十二指腸潰瘍、腸閉塞、腹膜炎、卵巣がん、腎不全など

T-Bil(別名:総ビリルビン)

検査により何がわかるか

肝胆道系の障害を推測できる。

どのような検査か

ビリルビンとは赤血球中のヘモグロビンが壊れてできる色素で、肝臓で処理(抱合)されて、胆汁を介して十二指腸に排泄されます。
このうち、肝臓で処理される前のビリルビンを間接ビリルビン、処理されたあとのビリルビンを直接ビリルビン、両方をあわせたものを総ビリルビンといいます。
総ビリルビンはおもに黄疸を確認する検査として直接ビリルビンとともに測定することが多く、肝胆道系の障害の指標となります。

どのようなときに検査するか

  • 肝胆道系疾患が疑われるとき
  • 黄疸が認められるとき

疑われる病気

高値の場合

溶血性黄疸、新生児黄疸、急性肝炎、肝硬変、原発性胆汁性肝硬変、肝内胆管閉塞、総胆管結石など

検査を受けるときの注意

年齢による差はありませんが、新生児では高値を示します。また、長時間の絶食後に上昇し、食後に低下する傾向がみられます。運動によっても軽度ですが上昇しますので、検査前の激しい運動は避けてください。

T-cho(別名:総コレステロール)

検査により何がわかるか

  • コレステロールをはじめ、糖・脂質代謝に異常をきたす疾患を推測できる。
  • 動脈硬化性疾患の推測ができる。

どのような検査か

コレステロールは細胞膜や血管壁の構成、副腎皮質ホルモンや性ホルモン、胆汁酸をつくる材料になるなど、生体になくてはならない役割をしています。
コレステロールが多くなると、血管壁にへばりついて離れず、しかも分解されにくいので動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞の原因にもなります。
最近では動脈硬化からくる成人病の予防と診断のために欠かせない検査となっています。

どのようなときに検査するか

  • 血清脂質に異常が認められたとき
  • 家族性高コレステロール血症や遺伝性脂質代謝異常が疑われたとき
  • 二次的にコレステロールの異常をきたす疾患が疑われたとき

疑われる病気

高値の場合
原発性
家族性高コレステロール血症など
続発性
糖尿病、ネフローゼ症候群、動脈硬化症、多発性骨髄腫、閉塞性黄疸、甲状腺機能低下症、妊娠など
低値の場合
原発性
無β-リポ蛋白血症、低β-リポ蛋白血症、LCAT欠損症など

続発性
甲状腺機能亢進症、重症肝障害、下垂体機能低下症など

TG(別名:中性脂肪、トリグリセライド)

検査により何がわかるか

  • 糖尿病や肥満をはじめ、糖・脂質代謝に異常をきたす疾患の存在を推測できる。
  • 動脈硬化性疾患の推測ができる。

どのような検査か

中性脂肪は脂質の一種で糖質、炭水化物、動物性脂肪などがおもな原料として肝臓で作られます。
血液中の中性脂肪が多くなると動脈硬化性疾患の原因となります。
また、肥満との関連が強く、中性脂肪と肥満度は比例します。肥満や食べ過ぎ、運動不足、飲酒により中性脂肪の値は高値になります。

どのようなときに検査するか

  • 血清脂質に異常が認められたとき
  • 家族性高コレステロール血症や遺伝性脂質代謝異常が疑われたとき
  • 二次的にトリグリセリドの異常をきたす疾患が疑われたとき

疑われる病気

高値の場合
一次性
高カイロミクロン血症、LPL欠損症など
二次性
糖尿病、肥満、動脈硬化、痛風、甲状腺機能低下症、クッシング症候群、ネフローゼ症候群、閉塞性黄疸、急性・慢性膵炎など
低値の場合
一次性
無β-リポ蛋白血症、低β-リポ蛋白血症など
二次性
甲状腺機能亢進症、下垂体機能低下症、肝硬変、アジソン病など

検査を受けるときの注意

中性脂肪の値は食後30分くらいから上昇し始め、4~6時間後にはピークになります。そのあと徐々に減少し、10数時間でもとに戻ります。よって検査は、正確な数値を得るため、12時間以上絶食した後、早朝の空腹時に採血します。
また、前日の食べすぎや飲酒で測定値が大きく上昇することがあります。副腎皮質ホルモン(ステロイド)剤や経口避妊薬でも高値になりますので、これらの薬を使用している人は、医師に申し出てください。

LDL-C(別名:LDLコレステロール)

検査により何がわかるか

  • 動脈硬化の発症および進展を推測できる。

どのような検査か

血液中のコレステロールや中性脂肪などが蛋白質と結びついたものをリポ蛋白といいます。このリポ蛋白は比重の違いで高比重リポ蛋白(HDL)、低比重リポ蛋白(LDL)、超低比重リポ蛋白(VLDL)、カイロミクロンに分けられます。
このうちLDLに含まれるコレステロールがLDLコレステロールです。
LDLコレステロールはコレステロールの運搬に重要な役割を果たしており、高値になると血管壁に沈着し動脈硬化が進みやすいといわれています。
よって悪玉コレステロールとも呼ばれます。

どのようなときに検査するか

  • 動脈硬化性疾患の診断および経過モニタリングとして

疑われる病気

高値の場合

動脈硬化症、ネフローゼ症候群、糖尿病、肥満、家族性高コレステロール血症、閉塞性黄疸など

低値の場合

肝硬変、慢性肝炎、甲状腺機能亢進症、家族性低コレステロール血症など

HDL-C(別名:HDLコレスレロール)

検査により何がわかるか

  • 動脈硬化性疾患の推測ができる。
  • 糖・脂質代謝やリポ蛋白の代謝異常の存在が推測できる。

どのような検査か

血液中のコレステロールや中性脂肪などが蛋白質と結びついたものをリポ蛋白といいます。このリポ蛋白は比重の違いで高比重リポ蛋白(HDL)、低比重リポ蛋白(LDL)、超低比重リポ蛋白(VLDL)、カイロミクロンに分けられます。
このうちHDLに含まれるコレステロールがHDLコレステロールです。
HDLコレステロールはLDLコレステロール(悪玉コレステロール)などが血管に沈着するのを取り除く働きをするため、善玉コレステロールと呼ばれており、動脈硬化を防ぐ働きをします。
よってHDLコレステロールの値を測定することにより、動脈硬化の予防や診断に役立ちます。

どのようなときに検査するか

  • 血清脂質に異常が認められたとき
  • 動脈硬化性疾患における危険因子を検索するとき
  • 二次的にHDLコレステロールの異常をきたす疾患が疑われたとき

疑われる病気

高値の場合
一次性
家族性高αリポ蛋白血症など
二次性
閉塞性肺疾患、原発性胆汁性肝硬変、アルコール飲用、運動など
低値の場合
一次性
LCAT欠損症、LPL欠損症など
二次性
糖尿病、肥満、脳梗塞、冠状動脈硬化症、慢性腎不全、肝硬変、甲状腺機能異常、喫煙など

BUN(別名:尿素窒素)

検査により何がわかるか

  • 腎臓や尿路系の機能障害を推測できる

どのような検査か

尿素窒素とは尿素の中に含まれる窒素分のことで、血液中の尿素は腎臓に運ばれ、糸球体でろ過されて尿中に排泄されます。
ところが腎臓の排泄機能が低下すると尿素窒素が尿中にうまく排泄されず、血液中に増加します。
よってこの検査は、第一に腎臓の病気の疑いがあるときに行います。
また、尿素は肝臓で合成されるため、重症肝機能障害があるときには合成能力が低下し、低値になります。

どのようなときに検査するか

  • 主に腎機能のスクリーニング検査として

疑われる病気

高値の場合
腎前性
脱水症、重症心不全、消化管出血など
腎性
腎炎、尿毒症、ネフローゼ症候群、腎結石など
腎後性
尿管閉塞、膀胱腫瘍など
低値の場合

中毒性肝炎、劇症肝炎、肝硬変の末期、尿崩症、末端肥大症など

検査を受けるときの注意

高たんぱく食で数値が上昇します。検査当日の食事内容には気をつけましょう。また、激しい運動でも値が高くなることがありますので、前日に激しい運動は控えましょう。
服用している薬剤、下痢や嘔吐、発熱などの後も高めに出ます。これらに当てはまる人は、その旨を医師に伝えておきましょう。

UA(別名:尿酸)

検査により何がわかるか

  • 高尿酸血症(痛風)を推測できる

どのような検査か

尿酸は血液中では尿酸塩という針状の結晶として存在し、健康な人の場合、その75%は腎臓の糸球体でろ過されて尿中に排泄され、残りは胆汁とともに便中に排泄されます。
ところが腎臓に障害があると血液中の尿酸が増え、飽和状態になると足の親指のつけ根やくるぶしの関節などに沈着して痛風結節をつくり、突然激しい痛みを伴う痛風発作が起こります。

どのようなときに検査するか

  • 腎機能のスクリーニング検査として
  • 痛風や腎結石を疑うとき
  • 高血圧、高脂血症、肝疾患などで二次性の尿酸異常が疑われるとき

疑われる病気

高値の場合
一次性痛風
若年性痛風など
二次性痛風
白血病、高脂血症、腎不全など
低値の場合
生合成低下
肝硬変、キサンチン尿症など
二次性低下
ファンコニー症候群、ウィルソン症候群、糸球体腎炎など

検査を受けるときの注意

一般に男性のほうが女性より高い値を示します。絶食、脱水、激しい運動、大量の飲酒などで高値になりますので注意が必要です。また、服用している薬剤により影響を受けることがあります。使用中の薬があれば事前に医師に報告し、指示に従ってください。

Cre(別名:クレアチニン)

検査により何がわかるか

  • 腎機能障害の有無を確認でき、人工透析などの指標となる。

どのような検査か

クレアチニンは筋肉内でクレアチンという物質から作られて血液中に出現し、腎臓の糸球体でろ過されて尿中へ排泄されます。
よって腎機能が低下すると血液中のクレアチニン濃度が高値になり、腎臓以外の影響を受けにくいことから、腎機能の障害を正確に反映するといわれます。
さらに、クレアチニンは筋肉内で合成されるため筋肉の量に比例します。筋ジストロフィ症などの筋肉の萎縮する病気では低値になります。

どのようなときに検査するか

  • 腎機能のスクリーニング検査として
  • 人工透析の適応を決めるとき
  • 筋肉の病気を疑うとき

疑われる病気

高値の場合
GFR(糸球体ろ過率)低下
糸球体腎炎、腎不全など
血液濃縮
脱水症、火傷など
低値の場合
尿排泄量増量
尿崩症、妊娠など
筋萎縮
筋ジストロフィなど

Na(別名:ナトリウム)

検査により何がわかるか

  • 体液水分量の平衡状態を推測できる。

どのような検査か

ナトリウムとは電解質成分のひとつで、血清中の陽イオンの約90%以上を占めます。
主にNaCl(食塩)の形で経口摂取され、からだの水分の保持や浸透圧の調節(酸・塩基平衡)などの働きをしています。
激しい下痢や嘔吐、過剰な発汗などのときには、体の中の水分が異常になくなるため、体内のナトリウムの濃度が上昇し、血液中のナトリウムが高値になります。
また、腎不全などで腎臓の機能が低下すると、尿量が減少し、体内の水分が外へ出ていかなくなるので浮腫(顔や手足のむくみ)になり、体内のナトリウムが水分で薄まって血液中のナトリウムは低値になります。

どのようなときに検査するか

  • 水代謝異常(嘔吐、下痢、浮腫、利尿剤投与時など)を疑うとき

疑われる病気

高値の場合

嘔吐、下痢、発汗過多(熱中症)、尿崩症、高Ca血症、クッシング症候群、口渇中枢障害など

低値の場合

腎不全、ネフローゼ症候群、心不全、肝硬変、アジソン病、妊娠中毒症、利尿剤・抗生物質投与など

K(別名:カリウム)

検査により何がわかるか

  • 体内の総カリウム量の増減を推測できる。

どのような検査か

カリウムとは、神経の興奮や心筋(心臓の筋肉)の働きを助ける、生命活動の維持調節に重要な電解質のひとつです。
血液中のカリウム値は、細胞内液からの流出、腎臓でのろ過・再吸収などによって変動します。
体内のカリウムの90%は尿からの排泄によるため、腎不全などにより腎臓の機能が低下すると尿量が減少し、血液中のカリウムは高値になります。
また、激しい下痢や嘔吐のときには吐物や便とともに体外に排出されるため、血液中のカリウムは低値になります。

どのようなときに検査するか

  • 水・電解質異常を疑うとき
  • 神経、筋症状がみられたとき
  • 利尿剤使用時

疑われる病気

高値の場合
細胞内からの移動
代謝性アシドーシス、インスリン欠乏、薬物の影響など
腎臓での排泄低下
腎不全、アジソン病、低アルドステロン症など
その他
溶血、白血球増多、血小板増多など
低値の場合
細胞内への移動
代謝性アルカローシス、インスリン投与、高濃度輸液など
消化管からの喪失
嘔吐、下痢、吸収不良性症候群など
腎臓からの喪失
原発性アルドステロン症、クッシング症候群、利尿剤の影響など

Cl(別名:クロール)

検査により何がわかるか

  • 水代謝異常や酸・塩基平衡の状態を推測できる。

どのような検査か

クロールとは電解質成分のひとつで、血清中の陰イオンの約70%を占めます。
主にNaCl(食塩)の形で経口摂取され、からだの水分の保持や浸透圧の調節(酸・塩基平衡)などの働きをしています。
通常、血液中のクロール濃度はナトリウム濃度と並行して変化します。しかし、その関係が崩れたときには酸・塩基平衡の異常を疑い、ナトリウムと同様の変化であれば水代謝異常を疑います。

どのようなときに検査するか

  • 水代謝異常(嘔吐、下痢、浮腫、利尿剤投与時など)を疑うとき
  • 酸・塩基平衡異常を疑うとき

疑われる病気

高値の場合

ネフローゼ症候群、腎不全、クッシング症候群、脱水症、食塩の過剰摂取など

低値の場合

激しい嘔吐、アジソン病、尿崩症、食塩の摂取不足など

Ca(別名:カルシウム)

検査により何がわかるか

カルシウムは生体中に最も多量に存在する無機物で、カルシウムの99%以上は骨や歯などで骨格の維持およびカルシウム の貯蔵庫として働いています。また、心筋の規律的な収縮、意識の維持、各種ホルモンの分泌、細胞の情報伝達、神経の興奮、血液の凝固など生命活動に重要な役割に関与しています。

どのようなときに検査するか

成人の生体には約1kgのカルシウムが存在するが、その99%は硬組織(骨や歯牙)に含まれており、残りの1%が軟部組織や細胞外液中に存在する。血液中に存在するカルシウムは約0.1%にすぎないが、種々の生理機能調節に重要な役割を果たしており、主に副甲状腺ホルモン(PTH)と、活性型ビタミンDである1,25水酸化ビタミンDにより、腸管からの吸収、骨での出入り、腎尿細管での再吸収の各段階で調節されている。したがって、これらのホルモン作用の異常、あるいは腸管、骨、腎などの標的臓器の異常により血中カルシウム値に異常をきたす。また、血清カルシウムの約50%は血清蛋白質(大部分はアルブミン)に結合している。

疑われる病気

高値の場合

ミルク・アルカリ症候群、多発性骨髄腫、甲状腺機能亢進症、原発性副甲状腺機能亢進症、急性腎不全、褐色細胞腫、家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症、悪性腫瘍骨転移、Addison病

低値の場合

ビタミンD欠乏症、吸収不良症候群、急性膵炎、低Mg血症、尿毒症、副甲状腺機能低下症、慢性腎不全、ネフローゼ症候群

GLU(別名:血糖、グルコース)

検査により何がわかるか

  • 糖尿病や低血糖を呈する各種の糖代謝異常を推測できる。

どのような検査か

血糖検査はおもに糖尿病のスクリーニング検査として行います。
血糖とは血液中に含まれているブドウ糖(グルコース)のことで、インスリンやグルカゴン、甲状腺ホルモンなどにより一定の量に保たれています。
しかし、インスリンが減少したり、作用ができなくなると血糖値が上昇し糖尿病になります。血糖検査は糖尿病の診断には欠かせない検査です。

どのようなときに検査するか

  • 糖尿病が疑われるとき
  • 高血糖や低血糖を呈する各種疾患が疑われるとき

疑われる病気

高値の場合

糖尿病(1型、2型、その他)

膵疾患
膵臓がん、膵炎など
内分泌疾患
先端巨大症、甲状腺機能亢進症、クッシング症候群など
その他
胃切除後、ストレス、肥満など
低値の場合
膵疾患
インスリノーマ(インスリン分泌過剰)
肝疾患
肝硬変、肝臓がんなど
内分泌疾患
甲状腺機能低下症、下垂体機能低下症
その他
過剰のインスリン注射、経口血糖降下剤の使用、激しい運動、絶食など

検査を受けるときの注意

前日の夕食後から絶食し、早朝空腹時に採血します。この間は運動も控えましょう。

HbA1c(別名:グリコヘモグロビン)

検査により何がわかるか

過去1~2ヶ月間の血糖コントロール状態の平均を反映している。

どのような検査か

赤血球中のヘモグロビンと血液中のブドウ糖とが結合したものをグリコヘモグロビンといいます。血液中に余っている糖が多ければ(高血糖状態)多いほど結びつきが増えグリコヘモグロビンも多くなるわけです。このグリコヘモグロビンには何種類かあり、そのうちの1つがHbA1cです。
HbA1cは一度作られると、赤血球が死滅するまでは消滅しません。赤血球の寿命は120日ほどであり、この半分くらいにあたる時期の血糖値の平均を反映します。
よって、血液検査を受けたときから約1~2ヶ月前の血糖の平均的な状態を知ることができるのです。

どのようなときに検査するか

  • 糖尿病および高血糖をきたす各種の糖代謝異常を疑うとき
  • 糖尿病の経過観察

疑われる病気

高値の場合

糖尿病、その他の高血糖を呈する疾患など

低値の場合

溶血性貧血や出血などで赤血球寿命が短縮し、網赤血球が増加している場合など

プロカルシトニン(別名:PCT)

検査により何がわかるか

敗血症(細菌性)の鑑別診断および重症度がわかる。

どのような検査か

プロカルシトニン(PCT)は、甲状腺C細胞から産出されるカルシトニンの前駆蛋白質で通常血中には分泌されません。しかし、細菌感染時にはプロカルシトニンが全身臓器で産生されて血中に分泌し、血中濃度が上昇します。
全身性感染症、特に細菌感染症でプロカルシトニンの血中濃度は上昇し、ウイルス感染症や慢性炎症性疾患、自己免疫疾患、アレルギー疾患、局所の細菌感染ではほとんど上昇が認められないのが特徴です。
細菌感染症をウイルス感染症や他の原因による炎症性疾患から迅速に鑑別できれば、抗菌薬を投与すべき症例をより適確に判別することが可能となります。よって細菌性敗血症の早期診断マーカーとして用いられ、迅速な抗菌薬投与の目安となります。
プロカルシトニンはエンドトキシンやIL-6、CRP等の血中マーカーよりも細菌感染に特異的で、重症細菌感染症、敗血症の新しいマーカーとして大変注目されています。

どのようなときに検査するか

  • 細菌・寄生虫・真菌感染症を疑うとき
  • 敗血症の重症度評価の指標・経過観察・予後判定

疑われる病気

高値の場合

全身性炎症反応を示す細菌感染症、敗血症、全身性真菌感染症、膵炎など

低値の場合

ウイルス感染症、慢性全身性炎症(リウマチ関節炎、血管炎など)
自己免疫疾患、腫瘍、局所限局細菌感染症など

心筋トロポニンT(別名:TnT)

検査により何がわかるか

  • 心筋(筋原繊維)の真の損傷を推測できる。

どのような検査か

トロポニンはトロポミオシンとともに心筋(筋原繊維)を構成する細いフィラメントを形成し、トロポニンTはトロポミオシンとの結合部です。つまりトロポニンは心筋構成成分なので、血液中での検出・増加は心筋の障害を意味しています。
特に急性心筋梗塞が疑われるときに検査をし、早期ばかりではなく、発症10日~14日後でも高値を持続しています。

どのようなときに検査するか

  • 急性心筋梗塞が疑われたとき
  • 狭心症、心筋炎が疑われたとき
  • 心臓手術で心筋障害を疑われたとき

疑われる病気

高値の場合

急性心筋梗塞、狭心症、心筋炎など

CRP(別名:C反応性蛋白)

検査により何がわかるか

  • 炎症や組織障害の存在と程度を推測できる。

どのような検査か

CRPとは、もともと肺炎球菌という肺炎を起こす菌によって炎症がおこったり、組織が破壊されたりすると、この菌のC‐多糖体に反応する蛋白が血液中に出現することからC‐反応性蛋白(CRP)と呼ばれていました。
しかし、肺炎以外の炎症や組織の破壊でも血液中に増加することがわかり、現在では炎症や組織障害の存在と程度の指標として測定されます。
炎症性疾患のある場合、炎症や組織破壊の程度が大きいほど高値になり、炎症や破壊がおさまってくるとすみやかに減少します。
そのため病態の活動度や変化、重症度、あるいは治療の予後をみるときには欠かせない検査です。
しかし、この検査だけでは病気の鑑別はできません。

どのようなときに検査するか

  • あらゆる炎症、感染症、腫瘍、外傷などのスクリーニングとして
  • 炎症性疾患の経過観察として

疑われる病気

高値の場合

感染症、悪性腫瘍、自己免疫疾患、組織壊死、炎症性疾患など

BNP(別名:脳性ナトリウム利尿ポリペプチド)

検査により何がわかるか

  • 心臓(主に心室)の負荷の有無やその程度を知ることができる。

どのような検査か

BNPは心臓から分泌されるホルモンの一種で、心筋梗塞や心不全のような心臓に負担がかかった状態になると心臓(主に心室)から血液中に分泌されます。つまり、このBNPの数値が高いということは、心臓に負担がかかっていることを意味します。
最近では検診やドックで測定されることも増えてきており、心臓病の早期発見が期待されています。
ちなみに心不全は左室肥大、虚血性心臓病、心筋症、弁膜症などの心臓病によって引き起こされることが多いですが、早期の段階では症状があまり出てこないことが多いので注意が必要です。

どのようなときに検査するか

  • 心不全の病態把握や確定診断、治療効果の判定のとき

疑われる病気

高値の場合

心不全、心筋梗塞、高血圧、慢性腎不全、ネフローゼ症候群、クッシング症候群、甲状腺機能亢進症など

低値の場合

脱水状態、利尿薬の影響など